~Hand~
アテム→セト


これが、多分最後だと思う。

こうして2人、寄り添って眠ることができるのは。

子供の頃からずっとこうしてきたのに
これからも、こうしていられると信じていたのに
終わりを迎えなければならないんだ。


オレは、お前を置いていく。
もう二度と、オレからお前に近づくことはない。
それは、オレたちの別離を意味する。
……お前は、決して態度に出さないだろ?
解り易く、オレを求めてはくれないだろ?

いつだって、オレからだったんだ。
オレがお前を求めれば、お前はオレを求めてくれた。
けれど、オレがそれをしなくなったら……
お前は、オレを、求めてくれるのだろうか。


もうじき朝が来る。
オレは行かねばならない。
あの光を浴びた瞬間、オレはこの国の『王』となる。

国の全てが、オレのモノ。
オレの全てが、国のモノ。
お前一人のオレではいられない。
オレ一人の、お前でもない。
どちらが幸せかだなんて、そんなこと解っていても
オレに選択の余地はないんだよ。

だから、セト。

この手を放して、くれないか……?





海馬→闇遊戯


まだ、意識が覚醒しきってはいなかったが
すぐ傍の存在が離れていこうとしていることは解った。

もうそんな時間なのか。
もう、『今日』は終わるのか。

年に一度、数時間だけの短い逢瀬。
互いに互いの存在を確信することもなく、
こんな関係がいつまで続くのか。

初めから、貴様の存在など不確かなものだったのだ。
貴様が現れようが、消えようが。俺は俺の目に見えるものを見る。
たとえ、直接言葉を交わすことができなくとも。

俺には必要ない
貴様が生きている『証』など。
俺が「生きている」と思えば、そうなのだ。
それ以外に一体何が必要だ。


俺が眠っていると思っていたのか。
遊戯は俺の髪をそっと抱き込むと
祈るように柔らかな唇を寄せた。

その感触は……その仕草には。
ムカつくことに、覚えがあった。


ずっと遥か昔の、
俺ではない『男』の、記憶の中に。

貴様は……ヤツにするのと同じことを、この俺にもしようと言うのか。

この、俺に。


ああ、そうだ。
あの朝も、貴様はヤツにこうしたな。
もう二度と来ないと知った、最後の朝に。

ヤツは、気づいていた。
だから、その手を放さなかった。
放したくは、なかった。

知らなかっただろう?
本当は、放したくなかったんだとよ。


馬鹿な男だ。
あの時なら、こいつもお前も、生きていたのにな……。

本当に、馬鹿な、男だ。
俺の、……以前の、俺は。


認めたくはないが、だからこそ。
俺は、遊戯を忘れない。

こいつに、置いて行かれない為に。
繫ぎとめて、執着して。

こうして毎年、
呼び寄せる。




時間、だな。
今年の『今日』は、もう終わる。

来年も変わらぬ姿で来るがいい。

それまでならば、

俺はこの手を放していてやれる。





fin.



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